最新記事
映画

幼い子供には「恐ろしすぎる」かも? アニメ映画『野生の島のロズ』は「心」を見つけたロボットを描く傑作だが...

An Intelligence Beyond AI

2025年1月31日(金)14時14分
デーナ・スティーブンズ(映画評論家)
『野生の島のロズ』の場面写真

©2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

<ルピタ・ニョンゴの名演にも注目。生まれたてのガンの雛と過ごすうちに母親としての責任感が芽生えたロボットは「プログラム」された自分に疑問を持ち始める──(レビュー)>

『野生の島のロズ(The Wild Robot)』は、のっけから主人公と観客を未知の世界に放り込む。

アメリカの作家ピーター・ブラウン(Peter Brown)による児童小説『野生のロボット(The Wild Robot)』(邦訳・福音館書店)を、クリス・サンダーズ(Chris Sanders)監督(『ヒックとドラゴン』)がアニメ化した。


映画『野生の島のロズ』予告編


幕開け、1体のロボットが緑豊かな孤島に漂着し、すぐさま周囲の環境をスキャンする。辺りには飛行機なのか宇宙船なのか、乗り物の残骸が散らばっている。

ロズことロッザム・ユニット7134(声はルピタ・ニョンゴ、Lupita Nyong'o)は、人間に「総合的かつ多面的なタスクの遂行」を提供するよう設計されたアシストロボットだ。だがあいにくこの島に人間はおらず、大きな体で二足歩行するロズは動物たちにとって恐怖の捕食者でしかない。

ロズは自ら休眠モードに入り、ソフトウエアに動物の声や環境を学習させる。静止画をつないだタイムラプス動画で捉えたこのくだりは軽妙で楽しいが、残念ながら目を覚まして言葉を話し始めたロボットに、動物たちは一層恐れおののく。

ただし例外がいる。生まれたばかりのガンのヒナだ。

ロズは怒ったクマから逃げようとして、誤ってガンの巣をつぶしてしまう。母親もきょうだいも亡くしたヒナ鳥は、卵からかえって初めて目にしたロズを親と認識する。

製造元に信号を送って現在地を教え、本来の宛先に配送されることを目指すロズにとって、ピヨピヨ鳴きながら付きまとうヒナ鳥は厄介者だ。

けれどもロズは、次のタスクに移る前に目の前のこの小さな生き物の要望に応えるようにプログラムされており、その中で次第に母親としての義務感と責任感が優位を占めるようになる。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ロ・ウクライナ、これまでで最多の捕虜390人交換 

ワールド

中独首脳、関係の重要性確認 米関税措置への直接言及

ワールド

トランプ氏の関税の脅し、貿易交渉でEUに「火を付け

ワールド

独外相、トランプ関税「誰にも資さず」 EUの対米交
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 2
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界の生産量の70%以上を占める国はどこ?
  • 3
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 4
    「娘の眼球がこぼれ落ちてる!」見守りカメラに映っ…
  • 5
    空と海から「挟み撃ち」の瞬間...ウクライナが黒海の…
  • 6
    「そっと触れただけなのに...」客席乗務員から「辱め…
  • 7
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 9
    トランプはなぜ南アフリカをいびるのか。「白人ジェ…
  • 10
    日本人女性の「更年期症状」が軽いのはなぜか?...専…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドローン母船」の残念な欠点
  • 4
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 5
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 6
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
  • 7
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 8
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 9
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 10
    人間に近い汎用人工知能(AGI)で中国は米国を既に抜…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 8
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 10
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

OSZAR »