最新記事
インタビュー

「達成の快楽は20世紀的」 佐々木俊尚に聞いた、山頂を目指さない「フラット登山」の魅力

2025年5月30日(金)18時00分
一ノ瀬伸
佐々木俊尚

4月23日に発売された『フラット登山』と著者の佐々木俊尚さん TOMOHIRO IWANABEーNEWSWEEK JAPAN

<脳疲労に悩む現代人を救うアクティブ・レスト(積極的休養)の選択肢としても期待される「新しい登山」の考え方について、このほど新著『フラット登山』を上梓した佐々木俊尚さんに聞いた>

登山といえば、きつい道中に耐えて山頂で達成感を得るもの──文筆家の佐々木俊尚さんは、そうしたステレオタイプを取り払い、自然に触れる楽しさや気持ちよさを味わう本質的なスタイルとして「フラット登山」を提唱している。

一般的な山登りと何が違うのか? このほど佐々木さんが上梓した『歩くを楽しむ、自然を味わう フラット登山』(かんき出版)の冒頭から引こう。


急登にヒイヒイ言うのだけが登山じゃない。フラット(平坦)な道も歩いて楽しもう。自然と向き合える楽しい登山の世界にまで、ヒエラルキーを持ち込みたがる人たちがいる。いわく「冬山のほうが偉い」、いわく「日本百名山をたくさん登ってるほうが偉い」。そういう下らないマウンティングから脱却して、みんながフラット(平等)に登山を楽しもう。

登山を難しく考えすぎるのはやめよう。もちろん遭難対策は忘れてはならないが、もっと気軽に週末日帰りでふらっと気軽に登山を楽しもう。(本書「はじめに」より)

「平坦」「平等」「気軽」の3つの意味を込めたというフラット登山。山頂を目指すいわゆるピークハントにこだわらず、昨今人気のロングトレイルほど長い距離を歩くわけでもない。日常的な散歩よりも深い自然にひたって、「歩く」楽しさや気持ちよさを堪能するという考え方である。

では、どんな経緯でフラット登山を"発明"したのか。また、このスタイルだからこそ得られる「21世紀的な快楽」とは? ライターの一ノ瀬伸が聞いた。

◇ ◇ ◇

──著書『フラット登山』は4月下旬に発売されてすぐに重版となりました。他にも「歩く」をテーマにした本がヒットするなど、最近「歩く」ことに注目が集まっているように感じます。その背景をどう考えていますか?

反響は予想以上で、いま、登山とか歩く行為への欲求が潜在的に高まっていると感じます。一つの要因で説明するのは難しいですが、体力づくりや健康意識の高まりはあると思います。

コロナ禍にキャンプブームがありましたが、キャンプ自体はあまり身体を動かすものではないので、もう少し健康的に自然に浸りたいというニーズが高まっている。仕事がかつてのブラック時代からホワイト化して時間に余裕ができている部分もありますよね。

試写会
『おばあちゃんと僕の約束』トークイベント付き特別試写会 5組10名様ご招待
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:サムティ、ヒルハウス傘下で資産運用強

ワールド

EU、英日伊の次期戦闘機開発の合弁を承認 他国への

ワールド

北欧・中東欧、ウクライナのNATO加盟に尽力 首脳

ビジネス

ヘッジファンドの世界株買い、約半年ぶり高水準=ゴー
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっしり...「これ何?」と写真投稿、正体が判明
  • 3
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び込んだドローンで軍用機41機を破壊
  • 4
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 8
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 9
    ウクライナ、シベリアのロシア海軍基地をドローン攻…
  • 10
    「不思議な発疹」の写真に、ネットで議論沸騰...医師…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 3
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 7
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 9
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 10
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 10
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中

OSZAR »