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日本社会

未婚化・少子化の裏で進行する、「持てる者」と「持たざる者」の階層化

2024年11月27日(水)11時20分
舞田敏彦(教育社会学者)
収入格差

年収が低い男性より高い方が既婚率が高く、なおかつその差は以前より開いている oldtakasu/photoAC 

<若者全体の年収が減少するのとは反対に、都心部の既婚男性の年収は上昇している>

未婚化の進行が止まらないが、対策を考える上で重要なのは、結婚しなく(できなく)なっているのはどういう人かを吟味することだ。

総務省の『就業構造基本調査』のデータを使って、学歴、職業、従業地位、年収といった観点でグループ分けし、既婚率を計算することができる。男性の結果を見ると、低学歴よりも高学歴、非正規雇用よりも正規雇用、年収が低い群よりも高い群で既婚率は高い。なおかつ、以前と比べて差が開いている。

結婚している(できている)人は、「選ばれし人」になっているかのようだ。藤田孝典氏の新書『貧困世代』の帯には「結婚・出産なんてぜいたくだ」と書かれている。2016年の刊行だが、現在では本当にそうなっているのかもしれない。

都市部の子育て世帯の年収を見ると驚かされる。<図1>は、東京都内23区のデータをグラフにしたものだ。

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おおむね、下が細く上が厚い「逆ピラミッド型」だ。年収1000万以上が46.8%で、2000万円以上も8.0%いる。この分布から中央値を計算すると977万円で、東大生の家庭よりも高い。結婚・出産の階層的閉鎖性が強まっていることの表れだろう。

「東京23区では、夫婦共稼ぎだと年収1000万円は普通では」という声もあるかもしれない。だが、都内23区の既婚女性(25~54歳)の半数弱はパートないしは無業で、上記のグラフの中には夫のみ就業の一馬力家庭も少なくないとみられる。

既婚男性の年収も上がっていて、都内23区の既婚男性(25~34歳)の年収中央値は、2007年では493万円だったのが2022年では577万円となっている。結婚期の若者全体の年収が減っているのとは反対だ。

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